
母さんが毎日のように電話を何度もかけてくるんだ。僕が仕事中でもおかまいなし、それもスマホだけじゃなくって職場の電話にもかけてきて困ってるんだよぉ😭

お母さんの状態も心配だし、君の生活にも支障が出てるのだから対策を講じないといけないよ!
高齢のご家族からかかってくる電話は「何かあったか?困っていないか?」と心配です。けれど認知症を患うようになると、内容に緊急性もなく、相手の都合も考慮されていないことがほとんど。これが頻繁になると、思いやりの気持ちもすれ違い、まるで“電話という名の暴力”に感じてしまうこともあります。
そこで今回は公的支援の利用や周囲の協力、環境の工夫を重ね、負担を軽くする具体的な方法を私の経験も織り交ぜながらご紹介します。
同じようなお悩みを抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
認知症による頻繁な電話の特徴
認知症の進行に伴って電話が異常に増えることがあります。内容は本人の不安や混乱からくる確認行為や妄想による訴えが多く、短時間に何度も同じ電話がかかってくることも珍しくありません。
相手に悪気はなくとも、受け手側は日常生活を中断され、精神的にも追い詰められるような感覚になります。この「悪意のない頻回の連絡」が、認知症介護において見落とされがちな大きな負担のひとつです。
ここでは、認知症による電話が増える背景にある心理や症状について、主な特徴を整理してみましょう。
【記憶障害】
認知症の代表的な症状のひとつが記憶障害です。電話をかけたこと自体を忘れてしまうため、同じ内容で何度も電話してくることがあります。本人にとっては「初めての連絡」のつもりで、家族は繰り返し同じやりとりを強いられるため、精神的な消耗が大きくなります。
【不安感や混乱】
電話の内容のほとんどは楽しい話題ではなくなるのも特徴です。認知症の方は、自分自身の変化を感じ取り、言葉にできない強い不安や恐怖を抱えています。その不安を少しでもやわらげたいという思いから、頼れる人にすがるように電話をかけてしまうのです。
【依存】
電話の相手はたいてい決まっていて、多くの場合は最も信頼している家族です。強い孤独感や生活への不満、助けを求める気持ちが、「話を聞いてくれそうな人」へ向けられます。結果として、限られた相手に負担が集中する傾向があります。
【妄想】
時には、「財布を盗まれた」「誰かが家に入った」といった、現実とは思えないような話が繰り返されることもあります。これは、認知症に伴う“物盗られ妄想”や“被害妄想”によるもので、本人にとっては事実であり、強く信じ込んでしまっているため、なだめたり訂正するのが非常に難しくなります。興奮状態になってしまうこともあり、対応には冷静さと根気が求められます。

しきりに電話してくるかげには認知症ならではの理由がいくつも隠れているんだね

ただの「迷惑行為」ではなく、背景にある心理や症状を理解することで、対処の方向性も少し見えてくるかもしれないね
本人の不安や状況も確認しつつ、見守り体制や技術的工夫を組み合わせる事が必要になります。
※母の場合、話の内容はほとんどが紛失物についてでしたが、ただ単になくなって困っているだけでなく、私が持っていってしまったのではないかというもので、大概は興奮状態で電話してきました。また、あれこれ持って来いというものも多かったです。記憶障害・不安・混乱・依存・妄想の全てがありましたが、特に依存が大きいと感じました。
見守り体制を整える

でも理解はしても、対応はストレスだし疲れてしまうんだよなぁ

電話対応のストレスを軽減するには、ご本人の不安を和らげつつ、連絡頻度をコントロールするための「仕組み」を整えることが大切だよ
公的支援サービスへ相談しよう

まずは利用できる介護サービスで、お母さんの不安を軽減したり、君が困った電話を回避できる時間をつくってみよう。
ご本人もご家族も“初めての介護”は分からないことだらけです。身近な専門窓口を利用して、早めにサポート体制を整えましょう。地域包括支援センターやケアマネジャーに相談すると、デイサービスや訪問介護といった支援につながる可能性があります。認知症初期であっても利用できる制度は多く、専門職による見守りや生活支援によって、ご本人の安心感が高まり、電話の頻度が落ち着くケースもあります。
相談窓口は
1.地域包括支援センター(高齢者の支援窓口)への相談
介護認定をまだ受けておられない状態なのであれば、お住まいの市区町村にある「地域包括支援センター」(高齢者の支援窓口)へ相談してみましょう。
認知症の方の行動や家族・周囲の困りごとについて、無料で相談できますので、電話の頻度や状況を伝えて支援策を一緒に検討してもらいましょう。
2. ケアマネジャー(介護支援専門員)に対応を相談
介護認定を受けている方であれば、ついているケアマネジャーに電話の頻度が多いことで生活や介護に支障が出ていることを伝え、ケアプランの見直しや支援内容の調整を依頼できます。
具体的に何がしてもらえるか
・デイサービスの利用で外へ出る時間を多くする
⇛他へ気持ちが向く時間を多くできる
・デイサービスやヘルパー利用で、他者とのコミュニケーションの機会を増やす
⇛スタッフにも話を聞いてもらえることで不安を軽減できる
※母は週3回(半日・入浴あり)のデイサービスと週2回(1時間)のヘルパーを利用させていただいていました。確かにサービス利用中に電話をかけてくることはありませんでした。
電話についてルールを決めよう

大したことでない内容を何度も電話してくるから、つい言葉がきつくなってしまうんだ😢

お互い落ち着いて話ができる時に、君が困っていることを伝えて、電話のルールを決めよう
ご本人の理解度に合わせて、「○時に電話していいよ」「この時間は電話に出られないよ」といった簡単なルールを決めて、繰り返し伝えてみましょう。もちろん、完璧に守れるわけではありませんが一定の抑止力にはなりますし、自分自身の許容範囲の確認にもなります。
=こんなルールはいかがですか?=
・電話を受ける時間を決める
電話を受ける側の都合をベースに、電話を受ける時間を決めましょう。
・定期的に時間を決めて電話をする
同じ時間に電話がもらえることを本人が理解すると、定期的に話ができることに安心します。
・留守電にしておき、後で電話をする
訴えの内容を確認してから話ができます。また、かけた本人が電話したことも忘れていたりするので、緊急性がなければスルーすることも可能になります。
・◯回に一回電話に出る
貼り紙をしてみよう
視覚的な情報は、記憶があいまいな方にとって安心材料となり、不安や混乱の軽減につながります。
電話の横や部屋の目立つところに、「電話は○時に」「今日は仕事なので留守電に」などの情報を書いた貼り紙を設置する方法もあります。
協力者をつくろう
一人で対応し続けると心が持ちません。ご家族や親戚、近所の信頼できる人に協力をお願いし、電話を受ける人を分散させるだけでも負担は大きく変わります。「今週は自分、来週は妹」といったローテーションもおすすめです。
※私の場合、一番効果があったと感じたのは協力者をつくれたことでした。
具体的には離れて暮らす妹にほぼ電話対応を担当してもらえたのです。まず『困ったときは◯◯(妹の名前)に電話!』という貼り紙を電話機のそばに貼ります。それでも私の方に何度も電話があるときは電話には出ないで、妹にLINEで「さっきから何度も着信があるけど」と連絡し、妹から母に電話をしてもらいます。緊急で対応が必要ならその内容を連絡してもらうことにしていましたが、一度もそのような事態はありませんでした。
また、毎日午前中と夜の二度、薬を飲んだかどうかの確認も含め、妹から母へ電話をしてもらいました。ただ、母は妹からかかってきた電話のこともすぐに忘れていました。

そうか、できることからやってみるよ
まとめ
認知症の家族から頻繁にかかってくる電話に、心をすり減らしている方は少なくありません。大切なのは、ご本人の不安に寄り添いつつ、自分自身の生活や心の平穏を守るための「線引き」をすること。
公的支援の利用や周囲の協力、環境の工夫を重ね「一人で抱え込まない」体制をつくることで、日々のストレスは確実に軽減できます。
1.公的支援サービスを利用し、電話できる時間を減らす
2.電話についてのルールを決める
3.貼り紙をして、決めたルールを守れるようにする
4.協力者をつくり、一人で抱え込まない
最後までご覧いただきありがとうございました。
少しでもご家族の介護負担が軽くなり、御本人との残された時間を悔いのないように送っていただけますように。
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