認知症の方にとって「薬を毎日忘れずに飲むこと」は大きな課題のひとつです。飲み忘れや重複服用が続くと、病状の悪化や副作用のリスクにもつながります。ここでは、認知症による薬の飲み忘れの原因や防ぐための工夫、注意すべきポイントについて解説します。
薬を飲み忘れる原因
記憶障害による飲み忘れ
認知症では短期記憶が低下し、「薬を飲んだかどうかを忘れてしまう」「そもそも薬を飲むこと自体を忘れる」「自分は病気ではないと思い込んで服薬の必要性を感じず、あえて飲まない」といったことが起こります。
被害妄想による服薬拒否
認知症の症状の一つである『被害妄想』により、「薬に毒が入っている」「家族が自分をだまそうとしている」「医者が金儲けのために薬を出している」といった思い込みで薬を拒否してしまうこともあります。
飲み忘れしないための工夫
認知症であってもご本人ができることはなるべくやってもらうことが進行を遅らせることに繋がるそうです。また、認知症であるという自覚がなかったり、プライドもあったりするので、認知症の進み具合によって飲み忘れしないための工夫も変えるとよいと思います。症状が軽い順にご紹介します。
薬ケースの活用
1日ごと、時間ごとに仕切られたケースに薬を分けておくことで、飲み忘れや重複服用を防ぎやすくなります。ケースは百均にいろいろな種類が売ってあります。
できれば家族が一緒に仕分けの手伝いや声掛けをできると良いですね。コミュニケーションが増えるし、ご本人の状態もわかります。
お薬カレンダー
壁掛けタイプのお薬カレンダーを使うと、薬を飲んだ日・飲んでいない日が一目で確認できます。視覚的にわかりやすく、家族も確認しやすいのが特徴です。こちらは薬局で無料でくださる場合も多いです。
薬ケースを使用する場合はほぼ本人のみの管理となりやすく、また認知症が進んでくると細かな指先の作業がしにくくなります。飲み忘れが出てきたり、薬ケースがどこかへ行ってしまったりする場合、お薬カレンダーでの管理がよくなってきますが、母は抵抗があって嫌がりました。
また、この頃からかかりつけ医にお願いして「薬の一包化」をしてもらうと良いです。ヒート(薬が包装されているアルミとプラスチックのシート)から出す手間がなくなりますし、複数の薬を間違わずに服用できます。
私が病院勤務している時、度々ヒートごと薬を服用されてしまう高齢者がおられましたが、そういった事故も防げるようになります。
薬局でお願いすれば、一包ずつに日付や服用時間も記載してくださいます。
電話や声かけ
家族が電話で声をかける、または訪問してくださるヘルパーさんにお願いして服薬を確認する方法も効果的です。
介護サービスを利用した内服管理
訪問介護サービスでは、介護士が服薬確認をしてくれる場合があります。必要に応じて「服薬支援」のサービスを活用すると安心です。
ただ、「服薬管理(本人が薬を飲むのを手伝うこと)」ができるのは医療スタッフ(看護師以上)になります。なのでヘルパーさんなどの訪問介護では「服薬確認」まで、母がいたサービス付き高齢者住宅では食事の際の配薬まででした。
施設での内服管理
在宅での管理が難しくなった場合、デイサービスやショートステイ、または入所施設で専門スタッフが薬を確実に管理してくれます。

その他気をつけること
本当に飲む必要がある薬か確認
加齢とともに薬の種類が増えがちです。また、前医からの引き続きで漫然と処方されている薬もあったりしがち。例えば、本人が夜間十分に眠れている場合の眠剤なども・・・。主治医と相談し、不要な薬がないか見直すことも大切です。
重複服用に注意
飲んだことを忘れて、再度服薬してしまうケースがあります。また、認知症が進むと時間の認識が鈍くなってきます。母は、寝る前の薬を朝間違って飲んでしまい起きれなくなることがありました。飲んだかどうかを確認できる仕組みを作りましょう。
思い込みや被害妄想による服薬拒否
「飲みたくない」という強い拒否がある場合は、無理に飲ませようとすると逆効果になることも。医師に相談し、薬の種類や形状を変更してもらう、または介護スタッフの協力を得る方法もあります。
必要以上に薬を欲しがる
一時期、母が痛み止めを許容量以上に欲しがるという時期がありました。肩こりがひどくなったもののようでしたが、運動療法を試したり、医師に相談し、プラセボ(偽薬)としてミンティアを渡すということもしました。しばらくして症状は落ち着きました。
まとめ
認知症による薬の飲み忘れは、記憶障害や被害妄想が原因となることが多く、家族だけでの対応には限界があります。
1.薬ケースやカレンダーを活用する
2.声かけや電話でサポートする
3.介護サービスや施設での管理を取り入れる
といった工夫を組み合わせながら、「安全に、確実に」服薬できる仕組みを整えていくことが大切です。
薬が本当に必要かどうかも含めて、主治医や介護スタッフと連携しながら、その人に合った方法を見つけていきましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
少しでもご家族の介護負担が軽くなり、御本人との残された時間を悔いのないように送っていただけますように。
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